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横浜地方裁判所 昭和31年(ヒ)15号 決定

申請人 原田玄竜 外一四名

被申請人 株式会社横浜協進産業

主文

申請人等に対し株式会社横浜協進産業の取締役及び監査役任期満了につき改選の件を目的たる事項とする株主総会を昭和三一年九月末日迄の間に招集することを許可する。

理由

本件申請の要旨は「申請人等は六月前より引続き被申請会社の発行済株式の総数の百分の三以上の株式を有する株主である。

而して被申請会社の取締役福田快作外六名及び同監査役大貫寛治外二名はいずれも昭和二九年六月一六日に選任せられた役員であるので、右監査役等は昭和三〇年六月一六日、右取締役等は昭和三一年六月一六日にそれぞれ任期満了したのに拘らず被申請会社は右役員等の改選をしないので、申請人等は昭和三一年七月一五日到達の書面を以て被申請会社代表取締役職務代行者杉浦忠雄に対し取締役及び監査役の任期満了による改選の件を目的とする株主総会の招集を請求した。しかるに被申請会社の代表取締役職務代行者等は、被申請会社の定款の定めにより右役員等の任期はその任期中の最終の決算期に関する定時総会の終了に至るまで伸長されるところ右定時総会は未だ終了していないからその任期は満了していないとの見解を取つて、遅滞なく総会招集の手続をしないから、裁判所に総会招集の許可を求めるため本申請に及んだ。」というにある。

成立に争のない疏甲第一号証乃至第三号証の一、二によれば、申請人等が六月前より被申請会社の発行済株式総数の百分の三以上の株式を有する株主であること、被申請会社の役員等がいずれも昭和二九年六月一六日選任せられたこと及び昭和三一年七月一五日に申請人等主張のごとき総会招集の請求がなされたことを認めることができる。

そこで被申請会社の役員の任期について考えて見ると、成立に争のない疏甲第四号証によれば被申請会社の定款には取締役及び監査役の任期が営業年度の中途において満了したときはその任期中の最終の決算期に関する定時総会終了まで任期を伸長しうる旨の規定及び被申請会社の決算期は毎年三月三一日に終る旨の規定があることが認められる。而して本件については任期中の最終の決算期とは取締役に付ては昭和三一年三月三一日、監査役については昭和三〇年三月三一日であると解すべきところ、右各決算期に関する定時総会が未だ終了していないことは当事者間に争いがないので、一応右役員等の任期は満了していないとも考えられる。しかしながら右定款の規定によれば定時総会は毎年決算期後六〇日以内即ち毎年五月三〇日までにこれを招集することを要すると定められているのであつて、これを徒過して定時総会が開催されない場合、何時までも右役員等の任期が伸長されるものとすれば、法律を以て株式会社の取締役、監査役の任期を制限した趣旨は全うせられないものというべきであるから、商法第二五六条第三項の定時総会の終結まで任期が伸長せられるという意味は通常の場合を予想して所定の時期に招集せられる定時総会の終了までと解すべきである。本件について定時総会が所定の時期に招集せられなかつたことについて然るべき事情があつたとしても、右事情は代表取締役(職務代行者)の商法第二三四条による総会招集義務違反の責任についてのみ考慮せらるべきであつて、取締役、監査役の任期はこれによつて伸長せられないものと解すべきである。

しからば被申請会社の取締役、監査役についてはその任期は全然伸長せられる余地なく、昭和三一年六月一六日及び昭和三〇年六月一六日にそれぞれ満了したものと認めるから、右取締役等の任期満了による改選を目的たる事項とする申請人等の株主総会招集の請求は正当である。この請求に対して被申請会社の代表取締役職務代行者等は任期満了せずとの見解を取つて総会招集の意思がないことを明らかにしていることは成立に争のない疏甲第五号証によつて疏明せられているから、被申請会社において遅滞なく総会招集の手続がなされなかつたものとして本申請はこれを認容すべきものである。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 海老原震一)

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